ライター・いしずか久見子

やわらかい光と新緑、色とりどりの花が美しい季節。
例年のように遠出をしてのリフレッシュが難しくなってしまいましたが、脳というのはほんの少しの工夫で勘違いをして快適さを感知してくれます。
その工夫のひとつとして、今回は色の効果に着目したストレスマネージメント術をご紹介します。

普段、私たちは数え切れないほどの“選択”を積み重ねて過ごしていますよね。
1日の始まりに歯ブラシを手にして歯を磨くような習慣は、ほぼ無意識で行っている選択ですが、服の色やメイクの色となると、やや意識的に「自分の気分」と向き合って選んでいる方が多いのではないかと思います。
ただその瞬間に「お家の中だし、いつもと同じでいいかな」とするか「どこかに明るいビタミンカラーでも取り入れてみようかな♪」とするかで、脳への刺激にぐっと差が出てきます。

色の世界は知るほどに奥深く、それぞれの色には地球と人類の歴史の中で培われた心理的な効果があります。
日常的によく使われる一般的な10色だけでも、色が伝えるメッセージは次のように多様です。

ホワイト 純粋、清らか、神聖
グレー  静けさ、安らぎ、曖昧
ブラック 品格、威厳、謙虚
パープル 神秘、高貴、妖艶
ブルー  知性、爽やか、平静
グリーン 調和、癒し、健やか
イエロー 無邪気、軽快、注目
オレンジ 暖かさ、陽気、喜び
ピンク  愛らしさ、幸福、母性
レッド  活発、情熱、晴れやか

ここではそれぞれの色のポジティブなメッセージに焦点を当てましたが、色によってはネガティブなメッセージを持っているものもあります。

例えば、踏切の色が黄色と黒なのは、2色を掛け合わせて強く“警告”を伝えるためです。
また、この10色は大きく3つのグループに分けることができます。

ホワイト、グレー、ブラック
無彩色と呼ばれ、落ち着きや清潔感、大人のマナーが求められる時には欠かせない色です。
ただ、無彩色ばかりに囲まれていると現在のような時期は気分が沈む方向に引っ張られてしまう心配も…。
無彩色はあくまでベースと考え、ぜひ次に紹介する暖色や寒色と組み合わせて楽しんでみませんか。

寒色
パープル、ブルー、グリーンの3色。
中間的なブルーグレーや、ターコイズなども、この寒色のグループに入ります。

暖色
イエロー、オレンジ、ピンク、レッドの4色。
アイメイクでよく使うブラウンやベージュなども、この暖色のグループに入ります。

このように、「暖かい」「寒い」という表現での色の分類は、もちろん視覚から受け取る印象がメインですが、実は人間は肌からも色を感知していることが近年の研究でわかってきています。
風や湿度といった要素を統一した上で、目隠しをして赤い壁の部屋と青い壁の部屋、それぞれに入室して比較した時、赤い壁の部屋のほうが約3℃も体感温度を高く感じるといわれています。

また、日常生活の中で私たちは色を光とセットで感知していますが、さまざまな色光を体に照射した実験においても、寒色の青い光よりも暖色の赤い光を浴びた時のほうがぐっと筋肉の緊張度が高くなったという研究報告があります。

色を見つめること、そして身にまとうことは、その日その時の自身にさまざまな刺激を与えるということ。
「家事や育児が多い日は服やメイクで色の冒険は難しそう…」という方は、料理で使うエプロンや手袋、鍋つかみなどの家事アイテム、あるいは洗顔時のヘアバンドといった美容小物で、自分が楽しい気分になれる色を取り入れてみてください。

また、身につけなくても買い出しついでにお花屋さんの前を通って、その日の自分の心模様とシンクロするお花を選ぶのもおすすめ。

好奇心からストレスまで、色を通じて無意識下に閉じ込めている感情を小まめに開放してあげることで、張り詰めた心や体を解きほぐして健やかさをキープしていきたいですね。